究極の機能美を求めて——。ゴルフボールケース開発物語

なぜ、既存のゴルフボールケースでは満足できなかったのか?
ゴルフというスポーツは、静寂の中でのメンタルゲームだ。しかし、その集中力を削ぐのは、ショットのミスだけではない。実は、腰元にある「ゴルフボールケース」という小さな道具が、プレーヤーの心理に小さくない影を落としていることに、私は気づいてしまった。

これは、一人のゴルファーが理想のケースを追い求め、厚紙と格闘し、本革の限界に挑み、ついに「オートフラップ」という一つの答えに辿り着くまでの、執念の記録である。

第1章:既存品への違和感と、現場で突きつけられた現実

ものづくりの第一歩は、常に「現状を知る」ことから始まる。
私はまず、世の中で「一般的」とされるゴルフボールケースを徹底的にリサーチした。ネットで評価の高い、合皮製の2個収納タイプ。ティーが4本刺さり、カラビナでの吊り下げと、ベルトへの直接装着の2通りが選べるという、一見すれば完璧なスペックの製品だ。

しかし、実際のラウンドに持ち出した瞬間、その「スペック上の完璧さ」は脆くも崩れ去った。

1. 装着感のストレス

午前中のハーフ、まずはカラビナでベルトループに吊り下げてみた。歩くたびに、そしてスイングのたびに、ケースが腰の横でブラブラと揺れる。この「振り子運動」が、アドレスの集中力を微妙に乱す。
「午後はベルトに固定しよう」
そう決めて昼休憩に付け替えようとしたが、ここでまた壁にぶつかった。ベルトに挟むためには、一度ベルトをズボンから引き抜かなければならない。ゴルフ場の脱衣所や駐車場ならまだしも、昼食前後の慌ただしい時間には、この「ベルトを外す」という行為が途方もなく面倒に感じられた。

2. 「ピンチ」の時に牙をむく操作性

運命の瞬間は、谷越えのパー3で訪れた。
自信を持って放ったティーショットは、無情にも失速し、深い谷の底へと消えていった。
「……暫定球を打ちます」
同伴競技者に告げ、苛立ちを抑えながら腰元のケースに手をやる。しかし、ケースがボールを締め付けすぎていて、なかなか指に掛からない。下から必死に押し出し、ようやくボールを手にした。
さらに追い打ちをかけたのが、フラップ(蓋)だ。磁石の留め具に「ボッチ(突起)」がついているタイプで、これが正確に中心にハマらなければパチンと閉じない。ミスショットの直後、指先がわずかに震える状況で、この「精密な位置合わせ」を要求されるストレス。

「道具はプレーヤーを助けるものでなければならない。このゴルフボールケースは私のプレーを邪魔している」

この確信が、自作への強烈な動機となった。

第2章:設計図のない挑戦。厚紙と端切れ革が教えくれたこと

「どこにもない、使いたくなるデザインを、本革で形にする」
そう決めた私はアトリエにこもり、まずは設計の基礎を固めることにした。

2個収納、そして「縦型」へのこだわり

収納数を何個にするか。予備は多いに越したことはないが、3個、4個と増えればケースは巨大化し、スイングの邪魔になる。プロや上級者の動きを分析し、最終的に「2個」が最もスマートで合理的であるという結論に達した。
また、収納方向は「縦」一択とした。横型はベルトに沿う形にはなるが、走った際の安定感に欠ける。重力に従って縦に並べることで、重心が安定し、体の動きとの一体感が生まれるからだ。

「引き算」の美学

ボール以外に何を収納すべきか。ティー、グリーンフォーク、マーカー。多くの欲張りなケースがそれらを詰め込もうとするが、私はあえて「ティー4本」に絞り込んだ。
グリーンフォークは人によって形状が異なり、専用のポケットを作っても汎用性が低い。マーカーもキャップにつける人が多い。
「自分がラウンドする時、本当にポケットから出したいものは何か?」
自問自答した結果、ロングティー2本、ショートティー2本。この計4本が、経験上、最も過不足のない「お守り」だと確信した。

最大の難問:ベルト着脱の「ホック化」

既存品の不満だった「ベルトを外さないと装着できない」問題を解決するため、背面のループをホック式にすることに決めた。しかし、単にホックをつければいいわけではない。激しい動きでも外れず、かつ、装着時にはスムーズに指が入る「隙間」が必要だった。このミリ単位の調整が、後に大きな意味を持つことになる。

第3章:発明「オートフラップ」の誕生

開発において、私が最も情熱を注いだのが「フラップ(蓋)」の構造だ。
あの谷越えのホールで感じたイライラ。それを二度と繰り返さないために、**「意識しなくても勝手に閉まる蓋」**は作れないか?

試作の山

最初は厚紙で、次は端切れの革で、何度も形を変えた。
革には「厚み」がある。その厚みが抵抗となり、普通に作れば蓋はピンと跳ね上がったままになってしまう。かといって、薄くしすぎれば強度が保てず、ボールの重さに負けてしまう。

磁石と重力、そして革の漉き(すき)

ある時、閃いた。フラップの先端に強力な磁石を仕込み、その「自重」を利用して蓋を曲げればいいのではないか。
本体側にも磁石を対面するように配置。これにより、ボールを取り出して手を離した瞬間、フラップが磁力に引き寄せられ、パチンと自動で閉じる仕組みが生まれた。

さらに、フラップの付け根部分を極限まで薄く「漉く」ことで、革特有の反発を抑え、滑らかな曲線を描くように調整。こうして、世界に類を見ない「オートフラップ機構」が完成した。

第4章:細部に宿る「おもてなし」の精神

プロトタイプが完成し、最終的なブラッシュアップに入った。ここで追求したのは、カタログスペックには現れない「触感」と「使い勝手」だ。

1. 究極の取り出しやすさ

フラップが自動で閉まっても、ボールが取り出しにくければ意味がない。
私はケースの両サイドを大胆にカットし、指の腹で直接ボールの側面を掴めるデザインを採用した。上から1個目を取り出す際は、フラップを持ち上げる動作と同時に、指がボールに吸い付くような感覚。
2個目のボールについても、底面に大きな穴(隙間)を設けることで、下から指でポンと押し出すだけで瞬時に取り出せるようにした。

2. ベルト装着時の「隠れた隙間」

最終試作を自分のベルトに装着した際、わずかな「付けにくさ」を感じた。
原因は、ケース本体とベルト通しの間の余裕のなさだった。そこで、ベルト通しのパーツをあえて数ミリ長く設計し、本体との間に「意図的な隙間」を作った。
この遊びがあるおかげで、鏡を見なくても、厚手のレザーベルトの上にスッとケースを滑り込ませ、ホックを確実に留めることができるようになった。

3. 円形カラビナの採用

ベルト装着派にとって、カラビナは時に邪魔な存在になる。しかし、吊り下げ派も無視できない。
そこで、一般的なDカンではなく、それ自体が開閉する「円形カラビナ」を採用した。不要な時はカラビナごと外してしまえば、ケースのデザインはよりミニマルに、洗練されたものになる。

結びに:Reboot Golf(リブートゴルフ)が届けるもの

こうして完成した「リブートゴルフ・ゴルフボールケース」は、単なる革小物ではない。それは、ミスショットという「ピンチ」の瞬間に、プレーヤーの指先に静かな自信を与えるためのデバイスだ。

特長を振り返れば、それはすべて「ストレスの解消」に集約される。

  1. オートフラップ: 手を離せば自動でロック。閉め忘れも、閉める手間もない。
  2. クイック取り出し: 掴む、押し出す。その一連の動作に淀みがない。
  3. ホック式ベルト通し: ラウンド直前の準備を、一瞬で終わらせる。
  4. 本革の経年変化: 使い込むほどに手に馴染み、あなたのゴルフ史を刻んでいく。

ゴルフボールケースからボールを取り出すのは、多くの場合、苦境に立たされた時だ。
そんな時、このケースが「パチン」と小気味よい音を立てて閉まる。その一瞬の充足感が、乱れたリズムを整え、次のナイスショットへのスイッチになる。

私はこのケースを通じて、すべてのゴルファーに「道具を使いこなす喜び」と「ストレスフリーなラウンド」を届けたいと願っている。

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